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【読書レビュー】一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 経済編

◇タイトル

一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 経済編

 

 

 

◇著者名

山崎圭一

 福岡県の高校教師。早稲田大学卒業。教え子から「もう一度先生の授業を受けたい!」という要望を受け,YouTubeで動画の配信を始める。たちまち全国の学生や教育関係者等の間で口コミが広がり話題となった。

 高校時代に世界史や日本史を選択しなかったので,私は歴史についてはさっぱり。ただ、本書に触れると,著者の授業は学生に好評だったと容易に想像できるほど,本書はとても読みやすく分かりやすい。学生時代に是非とも著者の授業を受けてみたかった。

 

◇あらすじ

 一般的な教科書は,地域毎に区切ってを時系ごとに「タテ」につなげて解説しているが,本書はお金・経済を軸に「ヨコ」をつなげて解説している。この工夫によって「世界史」の書籍とは言いながら,経済編とタイトルにあるように、社会経済分野の解説本のようにも思えるほど。本書貨幣の概念が誕生した紀元前から今日までを10章に分けて解説している。

 最初は、文明の発展がいち早く始まったヨーロッパ,中東,中国について。紀元前には既に貨幣が誕生し、貯蓄の概念が生まれた結果、貯蓄できる者とそうでない者の間に、貧富の差が生じ始める。

 貨幣の使用はその便利さから次第に広がりつつあったが、大きな転換点となったのは「大航海時代」。それまで地中海,インド洋を中心とした海上航路は、アメリカ大陸、東アジアまで拡大する。世界各地で生産された商品が行き来するようになった。

 ヨーロッパ諸国では、王は「絶対主義」といわれるような権威を維持するために、国をあげて金を稼ぐ仕組みづくりに乗り出す。国策として、商工業者の活動をある程度許容したり、「東インド会社」を設立した。

 19世紀に入り、イギリスがいち早く産業革命を達成し、生産品のコストダウンが進むと、自国の産業を守れなくなるため,ある程度経済力のある国家がイギリスの後に続くための政策をとる。フランス、ベルギー、ドイツ、アメリカ、ロシアや日本などがあげられる。こうした近代化が成功した国家は、自国の商品を市場に流通させるため、植民地を確保するようになる。こうして、「生産・販売」を担当する先進国と、「市場」と「原材料」を担当する地域という分業化がすすんだ。

 だが,「サライェボ事件」をきっかけに第一次世界大戦が勃発。敗戦国となったドイツは多額の賠償金を課せられ、やむを得ず、紙幣を増刷してしまい、ハイパーインフレーションが発生した。一方アメリカは、戦費がかさむ諸国に資金を貸付け、世界唯一の債権国に。アメリカ一人勝ちかと思いきや、ここで世界恐慌が起きる。

 第二次世界対戦後は、冷戦の時代に。ソビエト連邦を中心とした社会主義国は経済発展が停滞していき、冷戦構造は終結した。

 現代では、通信インフラの発展により、グローバル化が一層進む。世界的に経済発展を遂げるも、どこか一箇所で経済危機が起きると、深刻な経済危機が世界へ波及するようになる。

 

◇感想

 歴史は戦争や登場人物にフォーカスしがちであるが、本書のように、経済的視点から思考することで、なぜそのような出来事が起きたのかつながりがみえてくるので、理解もすすみやすい。

 結局のところ、自国あるいはその地域の支配者は、困窮し経済が回らなくなると、増税して資金を確保するか、他国へ侵略して市場を確保し、自国の製品を流通させて資金を確保し、経済を回していこうとする。しかし、過度な増税を行ってしまうと、人々の反乱をおこして国家が衰退していくパターンはよくあり、国家の栄枯盛衰の典型的といえる。

 近代に入ると先進国は、植民地を利用して安い労働力、原材料を活用し、自国で高付加価値の商品を生産し、植民地へ流通させる。結局何かを犠牲にしながら自身の利益を追求するというこのシンプルな仕組みは、太古から続いている。

  歴史・経済に精通している方であれば本書は物足りないと感じるだろうが、経済や世界史の一から学びなおしたい方、中学生高学年や高校生でこれから勉強される方にはとても良い本と感じた。