sfcgo’s diary

読書したら感想を投稿しようと思います。

【読書レビュー】労働Gメンが来る!

【書名】労働Gメンが来る!

【著者】上野歩

【出版社】光文社

 

 

【主な内容】

 主人公は、銀行から労働基準監督署に転職した新米の女性監督官。先輩の監督官と共に、賃金の未払い等の不当な扱いをうけた労働者からの申告を受け、労働基準法を遵守していない企業(使用者)とのトラブルを次々と解決していきます。

 本書では、サービス残業労働災害、労災隠し、賃金の滞納,セクハラなど、労基法を巡るトラブルが数多く事案が書かれています。それぞれの事案は現役の監督官への取材,参考文献から事例を参考しているため、非常にリアリティのあるものとなっています。

 作中で語られていますが、主人公は前職の銀行員時代は長時間労働、ノルマもきついといった厳しい労働環境であり、ついに退職することになります。その転職先として選んだ労働基準監督署ですが、労働環境が良さそうというある種の消極的な考えで再就職を果たしました。

 しかし、先輩の監督官達とトラブルを解決していくにつれ、主人公は少しずつ成長していきます。

 最終章では、新型コロナウイルス感染拡大の中、病院に勤務する妊娠中の看護師から相談を受けます。病院の経営者側は、病人のために感染拡大に立ち向かう勇敢な方針を掲げておりますが、一方で相談してきた看護師のように、感染の恐怖と激務の状況下の中で経済的理由から退職できないといことで、問題を抱えています。

 お互いが理解できる言い分がある中、主人公はプロの監督官としての信念と知恵を絞って立ち向かっていきます。 

【感想】

企業も生き残るために必死なのはわかるけど・・

 問題を抱える労働者と企業(使用者)の双方から、それぞれの仕事に対する熱意や思いがあり、一見すると企業側に情状酌量の余地があって、やむなく法に触れてしまうあたりはなんともやりきれないですね。ただ、労働者あっての企業ですし、法令遵守は大事ですね。

労働者への思いやりと変化への対応

 最終章では、新型コロナウイルスの拡大、働き方改革の促進というタイムリーな内容を扱っています。こういった環境変化の中では、働くことに対する考え方が、労働者と企業側とでズレが生じます。そのような時に大事なのは、当たり前ですが相手の立場にたって考えること(だけど難しい)と、変化を受入れ、変わっていくぞというスタンスだと思います。  ただ、相手の立場にたつというのは、自分(企業)に余裕がないと難しいんですよね。

こんな方にお勧め!  

 ・大学生、若手社員

 ・労働基準法は詳しくないけど、興味がある方

  作中では、労働基準法が登場しますが、難解な法律用語は比較的少なく、詳しくない方でも読みやすいと思います。20代の体力のあるうちは、激務でもある程度耐えられるかもしれませんが、健康は何事にも代えがたいものです。労働基準法は使用者側が順守するものですが、労働者側も、自分の身を守るうえでは大切な法律でして、それに気づかせてくれる書籍です。